犬のワクチン接種|盲目的に1年1回はもう必要ないかも?
犬のワクチン接種は、犬の健康を守る上で重要な役割を果たしています。とはいえ、1年1回は必要なのか?が 疑わしくなってきている、そんな話をちらほら耳にしませんか?
世界の獣医師学会が3年1回でいいと言っているらしい?とか、日本の1年1回のワクチン接種は多過ぎると勧告したらしいなど、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、犬のワクチン接種の種類や、現行の制度、今後の展望などを詳しく紹介します。
ワクチンのひどい副反応が出てしまい、愛犬のワクチン接種を打つのをためらっている人や、できることならたくさんのワクチンを打つのは避けたいと思っている人、ワクチンで辛い思いはさせたくないと思っている人は、ぜひ参考して愛犬の健康管理に役立ててください。
もくじ
犬のワクチンはどんな種類があるのか
犬のワクチンには以下のようなワクチンがあります。
- 必ず接種しなければならないコアワクチン
- 環境が生活スタイルによって必要に応じ接種するノンコアワクチン
- 法的に接種が義務付けられている狂犬病ワクチン
コアワクチン
以下のワクチンは、いずれも致死率が高く、犬にとって非常に危険です。
コアワクチンは、これらの病気から犬を守るために不可欠なワクチンです。
- 犬ジステンバーウイルス感染症
- 犬アデノウイルス1型
- 犬アデノウイルス2型
- パルボウイルス感染症
コアワクチンの接種頻度については、様々な意見があります。従来は、毎年1回の接種が推奨されてきました。
近年ではWASAVA(世界小動物獣医師学会)などのガイドラインに基づき、3年に1回の接種で十分であるという考え方が広まっています。
子犬期に正しいワクチネーションを行えば、成犬以降は抗体があればコアワクチンについては接種の必要がないという見解が示されています。
この見解は、免疫学的には周知の事実ですが、抗体検査が現実的ではなかったため、臨床の現場では実施することが困難でした。
近年は抗体価検査が手軽に受けられるようになり、費用も低下してきました。今後は、抗体検査に基づいた個別ワクチン接種が主流になっていくと考えられます。
通常は、子犬の生後6~8週齢からワクチン接種を開始し、その後3~4週間隔で2~3回の接種を行います。
このようにコアワクチンは複数回接種することで、確実に免疫を得ることができます。
成犬になったら、抗体が残っているかのチェックは必要ですが、基本的に3年に1回の接種で十分だという意見が多くなってきました。
しかし免疫力の維持に関しては個体差があり、より頻繁な接種が必要になる犬もいます。抗体価が1年も持たない免疫不全の犬もいるため、そのようなケースを発見するためにもまず抗体価チェックをするのが賢明なのです。
ノンコアワクチン
ノンコアワクチンは、犬にとって必須ではないワクチンですが、状況によっては接種を検討する必要があります。以下がノンコアワクチンの一部です。
- 犬パラインフルエンザウイルス感染症
- レプトスピラ症
- 犬コロナウイルス感染症
- ライム病
- ボルデテラ・ブロンヒセプティカ感染症
- ジアルジア症
繁殖犬、スポーツドッグなど、他の犬と頻繁に接触する機会が多い犬や、海外へ渡航する時は上記のワクチン接種が必要です。
住んでいる地域で特定の病気がしていて、感染するリスクが高い場合も接種を検討するべきワクチンです。
地域の感染症や伝染病の情報は、農林水産省のホームページに更新されていますので、ぜひ参考にしてください。
【監視伝染病の発生状況 農林水産省】https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/kansi_densen/kansi_densen.html
ノンコアワクチンには、レプトスピラ感染症に対するワクチンが含まれています。レプトスピラ感染症は人獣共通感染症であり、感染動物の尿から伝染します。
7種以上のワクチン接種が必要なケース
- 河川、沼、湖などの水辺や湿った土壌など、感染動物の尿に触れる可能性がある場所に行く場合
- アウトドアで川や湖で泳がせたり遊ばせる場合
- 野生動物が多くいるような場所に行く場合
- ネズミが多い地域に住んでいる場合
- 庭にタヌキやハクビシンが来る場合
- 東京都や神奈川県の郊外に住んでいる場合
- 地方への旅行に犬を同伴でよく行く場合
ワクチン接種が1年1回の慣習だった理由
- 混合ワクチンで複数の病気に対する抗体を一度に作るのが効率的で経済的であった
- 抗体価検査は費用と時間がかかり、一般的ではなかった
- 1年に1回の接種が当時は推奨されていた
上記のような理由でワクチン接種の1年1回が慣習化されてしまい、私たち飼い主にはワクチンの抗体価検査の存在すら周知されていなかったように思います。
これから私たちはコンパニオンアニマルのより安全なワクチン接種の方法があることを知った上で、適切なワクチン接種をするよう心がけましょう。
抗体価検査に基づいた個別ワクチン接種
- 抗体価検査で必要な抗体価を調べ、不足しているものだけワクチンを接種する
- 費用を抑え、副作用のリスクを減らせる
- 近年、動物病院や検査機関で手軽に受けられるようになってきた
抗体価検査を実施している動物病院や検査機関は、徐々に増えつつあります。インターネットで『ワクチチェック』と検索するとお近くの病院でワクチチェックという抗体価検査を受けることができます。
検査は血液を取って調べるだけのことですので、犬の体に負担をかけることはありません。安心してワクチチェックを受けましょう。その結果、抗体価が十分だった場合は、その年はワクチン接種は必要ないと判断できます。
一定の病気の抗体価が少ない場合はワクチンを打つという判断をしましょう。
いずれにしても、ワクチチェックをしている病院を探して、信頼のおける獣医師に相談をすべきです。
犬用ワクチチェックとは
犬の血液中におけるパルボウイルス、ジステンパーウイルス、アデノウイルスのそれぞれ抗体価を測定する検査です。
従来のワクチン接種は、1年に1回の接種が推奨されていましたが、近年では抗体検査に基づいた個別ワクチン接種が推奨されるようになってきました。
狂犬病ワクチン
狂犬病は、一度発症すると100%死亡する恐ろしい病気で、人と動物に共通して感染する病気です。狂犬病予防法で飼い主の義務として摂取させるワクチンです。一年を過ぎると効果が落ちて抗体が維持できないので一年に一度の接種が必要です。犬を登録した市町村長から狂犬病予防注射済票交付を受け、犬に注射済票を装着する必要があります。犬を海外へ渡航させる場合、狂犬病ワクチン接種証明書が必要で、摂取していない場合は入国を拒否されるので注意が必要です。
世界的に狂犬病ワクチンの有効期間を延長させるための研究がされており、近い将来狂犬病ワクチンでさえ、3年に1回で済むようになるかもしれません。そんな医学の発展を待つ必要があります。
犬のワクチン接種についてのまとめ
飼い主は、犬のワクチン接種の現状と問題点を理解し、適切なタイミングでワクチン接種を行うことが大切です。ワクチン接種のお知らせが来たら、あら、もうそんな時期なのねといって、7種や9種などのワクチンを打ち続けることは、ある意味とても安易で簡単なのかもしれません。
しかし不必要なワクチン接種をすることで、大切な犬の健康が害されることのないようにしましょう。
私たち飼い主は、責任を持って正しい情報を得て行動すべきです。