パピーの頃にドッグランに行っては行けない理由と見過ごされがちなリスク
皆さん、こんにちは。発行料理家で愛犬家の林里見です。愛犬たちの健康寿命20歳を目指す手作り発酵ご飯講座を主宰しています。今回は、先日私が体験した「ドッグラン」での出来事をきっかけに、日本の犬を取り巻く文化や、飼い主として見過ごしてはいけない重要なリスクについて、深く掘り下げてお話ししたいと思います。
先日、本当に久しぶりにドッグランに行ってきました。私をご存知の方なら、「珍しいね!」と思われるかもしれませんね。普段、私は犬たちを連れて野山を駆け回ったり、川で思い切り遊ばせたりと、自然の中で過ごすことを好んでいます。いわゆる「ドッグカフェ」や「ドッグラン」といった、犬が人工的に集まる場所には、ほとんど足を運びません。
なぜなら、そこには私の愛犬たちが抱える特性と、私が考える「犬と暮らす上で避けるべきリスク」が存在するからです。
もくじ
ドッグカフェに行かない理由:愛犬たちの個性と潜在的なリスク
うちの犬たちは、他の犬とあまり仲良くできません。もちろん、家族のように一緒に育った仲間や、ごく一部の「この子なら大丈夫」と認識した子とは上手に付き合えます。しかし、初対面の犬に対しては、非常にナーバスになり、興奮して吠えたり、時には威嚇したりしてしまうことがあります。
特に苦手なのは、以下のようなタイプの子たちです。
- 小さくても激しく吠え立てる子: 甲高い声で連続して吠えられると、うちの子たちはパニックに陥りやすいです。
- 伸縮リードで急接近してくる子: 飼い主さんがコントロールしきれていない状態で、予測不能な動きでバーッと目の前に飛び込んでくる犬は、うちの子たちにとって大きなストレスです。
これらの状況に遭遇すると、うちの子たちはかなりの頻度で吠えたり怒ったりしてしまいます。そうなると、他の飼い主さんにご迷惑をかけてしまいますし、何より犬たち自身が強いストレスを感じてしまいます。「お金を払ってまで、こんなに疲弊するなら行かない方がマシだ」というのが正直な気持ちです。
だから私は、ドッグカフェに行くなら、必ず「貸し切りエリア」がある場所を選びます。先日も、たまたま貸し切りにできる場所があることを知っていたので、そこを訪れました。そこで改めて感じたのは、うちの子たちが何を一番求めているか、ということです。
彼女たちは、他の犬と群れて遊ぶことには一切興味がありません。彼女たちの最大の喜びは、私とボール遊びをすること、私とフリスビーで遊ぶこと、そして私が出すコマンドに集中し、それをクリアすることです。ジャンプしたり、「待て」と言われたらじっと待ったり、アイコンタクトで私の指示を待つ。これこそが、彼女たちにとって最高の時間なのです。
つまり、ドッグカフェで他の犬と交流することを期待して連れて行っても、うちの子たちはただひたすら私のボールやフリスビーで遊びたがるだけ。他の犬との関わりを求めることはありません。このような特性を持つ犬たちを無理にドッグカフェに連れて行くことには、大きなリスクが伴うと私は考えています。
ドッグカフェ・ドッグランの潜在的リスク3選:命の危険、コマンド不服従、そしてリアクティブ行動
私がドッグカフェやドッグランに対して慎重な姿勢を取るのには、うちの子たちの個性だけではありません。一般的に、そうした場所には、犬を飼う上で避けたい、いくつかの潜在的なリスクが潜んでいると危惧しています。
1. 他の犬とのトラブル:命の危険すらある
ドッグカフェやドッグランでは、様々な性格やサイズの犬たちが一堂に会します。中には、社会化不足の犬や、他の犬に対して攻撃的な傾向のある犬もいるかもしれません。どんなに飼い主さんが注意していても、犬同士の相性は予測できないものです。
もし、うちの子が他の犬に強く威嚇されてパニックになったり、逆にうちの子が吠えかかって相手を刺激してしまったりした場合、喧嘩に発展する可能性があります。小型犬が大型犬に襲われて命を落とす、あるいは重傷を負うといった痛ましい事故は、残念ながら毎年どこかで発生しています。
「うちの子は大丈夫」「きっと仲良くできるはず」という希望的観測だけで、愛犬をそのようなリスクに晒すことは、決してあってはならないと私は考えます。トラブルが避けられない状況に遭遇する可能性は常にあり、その結果、愛犬が心に傷を負うだけでなく、命の危険にさらされる可能性すらあるのです。
2. 他犬と遊ぶ方が好きになり、飼い主のコマンドを聞かなくなる
特に幼犬の頃からドッグランやドッグカフェに頻繁に行く子犬には、この傾向が強く見られます。子犬にとって、他の犬と遊ぶことは刺激的で楽しい経験です。しかし、その「楽しさ」が過剰になってしまうと、飼い主さんの存在が二の次になってしまうことがあります。
「ドッグランに行けば、いつでも他の犬と遊べる!」と犬が学習してしまうと、飼い主さんの呼び戻し(コマンド)に応じなくなったり、他の犬に気を取られて指示が全く耳に入らなくなったりするリスクが高まります。本来、犬にとって一番の関心対象は飼い主であるべきです。飼い主さんとの絆を深め、飼い主さんのコマンドに従うことが「最も良い結果(褒められる、ご褒美がもらえるなど)」に繋がるということを、幼い頃からしっかりと教えていくことが重要です。
ところが、他の犬との遊びの方が優先されてしまうと、いざという時に飼い主さんの指示が通じず、事故やトラブルに繋がる可能性が高まります。これは、犬と飼い主の関係性において、非常に深刻な問題だと私は捉えています。
3. 他犬=遊べる存在と思い込み、散歩でリアクティブになる
ドッグカフェやドッグランで「他の犬=遊べる仲間」と認識してしまうと、その認識が普段の散歩にも影響を及ぼすことがあります。散歩中、他の犬を見つけると興奮して「遊んでほしい!」と吠えたり引っ張ったりする「リアクティブな行動」に繋がる可能性があります。
リアクティブ行動とは、犬が特定の刺激(人、他の犬、自転車など)に対して過剰に反応してしまう行動です。多くの人が「ドッグランに行くこと」を犬の社会化だと考えていますが、これは大きな誤解です。ドッグランは不特定多数の犬が集まる場所であり、犬同士の相性によっては、かえって嫌な経験や恐怖心を植え付けてしまうリスクがあります。
本当の社会化とは、特定の場所に行くことではなく、様々な刺激に対して落ち着いていられるよう学習することです。子犬の最も重要な時期に、安全な環境で様々な人や犬、音、匂い、場所などに少しずつ慣れさせていくことが、犬が健全に成長するために最も重要なのです。
これは、犬にとっても飼い主にとっても、ストレスの多い散歩になってしまいますし、周囲の人々にも迷惑をかけてしまう可能性があります。
これらのリスクを考慮すると、私は愛犬たちを不特定多数の犬が集まる場所へ連れて行くことには、非常に慎重にならざるを得ません。愛犬の安全と心身の健康、そして飼い主との良好な関係性を維持するためには、これらのリスクを十分に理解し、避けることが賢明だと考えています。
日本のペット文化への疑問:ドッグカフェが象徴する「隔離」
私がドッグカフェという場所自体に感じるもう一つの違和感は、それが日本独特の、ある種の「隔離文化」を象徴しているように思える点です。先進国でありながら、犬が公共の場から締め出され、専用の「カフェ」に押し込められている状況は、果たして本当に望ましい姿なのでしょうか。
例えば、ドイツやイタリア、フランスといった国々では、レストランやカフェ、パブに犬を連れて行くのはごく当たり前の光景です。彼らは、犬が社会に溶け込み、人間と一緒に生活することが当然のこととして受け止められています。もちろん、衛生面を考慮して一部の飲食店ではテラス席のみ可能といった制限はありますが、基本的に犬は社会の一員として、人間と共に様々な場所へ出入りが許されています。
ところが日本ではどうでしょう。犬を連れて公園に入ることさえ、条例で禁止されている自治体すらあります。一方で、人間の子どもたちのための野球場やサッカー場、高齢者のためのグランドゴルフ場など、特定の活動のための施設は公園内に設けられています。しかし、犬のための特別な施設は、驚くほど少ないのが現状です。
犬を飼っている世帯は、今や総世帯の約3割にも及ぶと言われています。私たちは市民として税金を納め、愛犬と共に生活しています。それなのに、なぜ私たちは公園から締め出され、ドッグカフェという限られた空間に押し込められなければならないのでしょうか。なぜ、他のスポーツ施設のように、犬が安全に、そして自由に運動できる専用のスペースがもっと整備されないのでしょうか。
この現状は、日本のペット文化がまだまだ未成熟であることを示していると、私は強く感じています。ドッグカフェができたからといって喜んでいる場合ではありません。この「隔離」とも言える状況を問題視し、私たち飼い主がもっと声を上げていくべき時が来ているのではないでしょうか。
変わるべき「犬との暮らし」の基準:真の共生社会を目指して
日本社会は、長らく「上の人が決めたことを変えられない」「異論を唱えにくい」という風潮があります。しかし、動物との共生という側面において、このままではいけないと私は思います。
動物、特に犬との生活は、単なる「ペットを飼う」というレベルを超え、社会全体でその文化や習慣、そして飼い方の基準を厳格に見直す時期に来ています。
例えば、一部の国では、犬を飼うためのライセンス制度や、飼い主に対する教育が義務付けられています。「この人には犬を飼う資格がない」と思われるような人が、簡単に犬を飼えてしまう日本の現状は、やはり改善されるべきだと感じています。無責任な飼い主が増えれば、それがそのまま保護犬問題や近隣トラブル、ひいては社会全体の動物への認識の低下に繋がってしまうからです。
真の意味で犬と人間が共生できる社会を築くためには、以下の点が不可欠だと考えます。
- 犬専用施設の拡充: ドッグランだけでなく、安全なフェンスで囲まれ、水飲み場などの設備が整った、犬がリードなしで自由に運動できる公共の場を増やすこと。
- 公共の場へのアクセス改善: テラス席や特定のエリアなど、条件付きでも良いので、犬が飲食店やその他の公共施設に同伴できる選択肢を増やすこと。
- 飼い主教育の義務化: 犬を飼う前に、適切な知識や責任について学ぶ機会を設けること。
- 動物愛護法の強化と執行: 無責任な飼い主や虐待に対して、より厳しく対応できる法整備と、その適切な執行。
もちろん、私自身も「めんどくさいから」と言って、なかなか声を上げられない一人かもしれません。しかし、心の中では常に、もっと犬たちが社会に受け入れられ、より良い環境で暮らせるようになることを願っています。
今後の展望
この問題意識は、私の活動の根幹にも繋がっています。発酵料理や手作りご飯を通じて愛犬の健康を追求するだけでなく、犬を取り巻く社会環境についても、積極的に発信していきたいと考えています。
今後、「危ない」という企画で、リスナーの方々と共に、このような日本のペット文化や飼い主としての本音、時には「毒」を吐き出すような深い議論の場を設けていきたいと思っています。インスタグラムのストーリーやリール、ポッドキャストで告知しますので、ぜひチェックしてください。
明日からも引き続き、愛犬たちの健康を支える発酵ご飯や発酵食品そのもののお話もしていきますので、どうぞお楽しみに。
犬を飼う人間として、もっとこうあるべきではないか、もっと疑問に思うことがあるのではないか。そんな問いを皆さんと共有し、共に考えていけることを願っています。
ワンネス発酵アカデミー林さと美